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赤ちゃんの「輸送反応」

赤ちゃんを抱っこして(あやして)いる時、

立って歩くと泣きやみ(大人しくなり)、座ると泣きだすってこと、よく経験されると思います。

この赤ちゃんの行動を脳科学から解明した研究が発表されています。

動画もご覧いただけます。

https://www.riken.jp/press/2013/20130419_2/

 

7~8年ほど前になるでしょうか、

この研究をされた黒田公美先生の講義を聞いたことがあります。

大変面白かったです。

先生は当時、理化学研究所の脳科学総合研究センターにお勤めで

親和性社会行動研究チームのリーダーをされていたのですが、もとは精神科医。

精神科医として働いている時に、

診ている症状が生育歴というか母子関係に起因するのではないかと思っていて、

自分もいずれ母親になるし、子育てに役立つ研究をしたいということで、

今のお仕事に就かれたとのことでした。

 

講義内容は、抱っこして歩くと泣き止む赤ちゃんの謎を脳科学的に解明する

というような内容でした。

赤ちゃんは、お母さんに安全に大人しく運ばれるために、

抱っこされて歩いて動かれると、リラックスして泣き止むという、

赤ちゃんの輸送反応を説明して下さいました。

 

赤ちゃんは、お腹側が接して(なので実は背中スイッチではなくお腹スイッチ)

股関節を曲げて絡みつくように抱かれて、胎児のような姿勢をとるとリラックスするようです。

輸送(抱っこして歩く)は、長い空港を急ぎ足で歩いて行くような感じが良かったとのこと。

 

輸送反応以外に、印象に残った話を1つ。

実験でマウスの脳神経を詳しく診ていて、

子育ては本能だけではなく、

経験・学習による神経回路の成熟が必要、ということがわかったそうです。

自分が育てられてきた経験や見て学んできたことに加え、

実際に子育てをしながら学習を重ねていくことが必要ということです。

かなり専門的な難しい話でしたが、ざっくりまとめると

子育て体験が、子育てを学習する神経回路を活性化して、

養育能力を発達させるのではないかということでした。

 

つまり、女性なら母性本能で初めからうまく育児ができる、というわけではなく、

母親になって子育てをするには、やはり経験や学習が必要であるということを

脳科学が教えてくれた、ということでしょうか。

初めてお母さんになる女性が、不慣れだったり緊張するのは至極当然のことなのですね。

 

また、どうしてもうまく育児ができないと悩まれる場合も、

脳科学的に説明がついて、子育てに必要な脳神経の回路を活性化することができれば、

問題解決(治療)になるかもしれないということでした。

 

オスのマウスの実験も興味深くて、

交尾や子どもから得られる感覚を与えると、

養育をする脳の部位が活性化するのだそうです。

交尾や子どもに接することで、攻撃性を抑える作用があるらしいです。

 

黒田先生は研究によって、養育者の支援に貢献したいと望んでおられました。

立派な親にならなくてもいい、

いろんなことがある世の中で、だいたいよく子育てできてればいい、

それなりに良い親「good-enough parent」でいいのですよ、とメッセージを送ってくれました。